『書きたい人のためのミステリ入門』読みました。
読むと書くとは表裏一体。書き手の視点を知れば、ミステリは飛躍的に面白くなる。長年、新人賞の下読みを担当し、伊坂幸太郎氏、道尾秀介氏、米澤穂信氏らと伴走してきた編集長が、ミステリの〈お約束〉を徹底的に解説。フェアな書き方、アンフェアな書き方とは? 望ましい伏線の張り方は? 複雑な話だから長編向き? 「人間が書けている」とは? なぜ新人賞のハウツーを信じてはいけない? 読むほどにミステリの基礎体力が身につく入門書。
『書きたい人のためのミステリ入門』 感想
感想としては読み手の人にこそ読んで欲しいな、と。
実は本書内でもその旨書かれていて、以下本文より一部抜粋。
また、「自分は読む専門だから」という人も、いや、そうゆう人こそ、是非、読んでみて欲しい。読むと書くとは表裏一体。書き手が特に意識したり、苦労したりするポイントを知れば、読書は飛躍的に楽しくなる。
-はじめに- より
囲碁や将棋に限らず、名人がどれだけ強いか体感するためには、自分にもある程度の力量が必要となる。それと同じで、書き手への理解が進み、ミステリの基礎体力が付けば、同じ作品でも、何が凄くて、どこが画期的なのか、読解の解像度は目に見えて上がるはずだ。
-はじめに-より
と言った感じ。そして本書では「そもそもミステリって何?」に始まり「フーダニット」「ハウダニット」など基礎の基礎の内容を、名作ミステリ作品を例に挙げながら、これでもかと分かりやすく解説してくれる。まさにミステリ入門書。
ほんと例として上がる作品数が多くて、何より紹介の仕方が上手いので、その作品を猛烈に読みたくなる。巻末に紹介された本の一覧は載っているので、未読の作品は読むつもり。
ちなみに入門書というと、知識を紹介していくみたいなイメージで「そんなのググればいいじゃん」ってなりがちだけど、本書はそれだけでは終わらない。最近の、そしてこれからのミステリの動向や、普段原稿を読んでいて頻繁に思うことなど、基礎から派生した応用。筆者の長年の経験に基づく「編集者」からの視点も紹介されていて、ググるだけでは分からない事も知れる。特に、惜しくも新人賞を逃してしまった人との会話の中で感じた「傾向と対策」の話や、不意に作家が漏らした「小説を書くのに一番大切なこと」なんかはシンプルに面白い。
ということで、大変素晴らしすぎる本だったので、小説家を目指している方はもちろん、読み手、さらに言えば俺のような感想ブロガーなんかも必読だと思う。読み手として作品を深く、また違った目線で楽しむのはもちろん、感想を書く上でも、こちらが一定の力量を持つ事で正しく論理的にその作品について述べることができる。
そしてたしかな論理性のある感想は、やっぱ読みやすいし周りからの共感も得られる。そして作る側もそれを見てより一層良い作品にしよう。ってなるだろうし、良い循環が生まれるはず。
ちなみに本書は「ミステリ」でしたが、ファンタジーやSFとか、他ジャンルでのこうゆう本ってあるんですかね?ちょっと探してみよう。