東野圭吾作品は子供の頃から継続して読んでて、加賀恭一郎シリーズに関してはほぼすべて読んでたつもりでした。
ところが最近は追えてなくて、先日たまたま書店で発見して購入しました。
2019年に発売という事で、少し遅れてしまったのですが感想書いていきます。
希望の糸/東野圭吾 あらすじ
「死んだ人のことなんか知らない。
あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。
どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。
希望の糸/東野圭吾 感想
愛情という感情をどう整理するか?
※ネタバレを含みます
「家族の絆」がテーマの本作なんですが、個人的にはさらに一歩踏み込んで「愛情」という感情をどう整理するか、どう処理するか?って話だったよなーと思いました。
汐見行伸、玲子夫妻は、震災で愛する二人の子を失いました。悲しみに暮れる中、夫妻は新たに子供を作り、そして生まれた娘に対して半ば二人の代わりとして愛情を注ぎました。
綿貫哲彦と花塚弥生は、子宝に恵まれず、綿貫哲彦の方針からお互い「愛情」はありましたが、別々の道を歩むことに。
綿貫の今の妻・多由子は過去の恋愛の経験から、愛情に飢えています。そしてようやく掴んだ幸せに危機が訪れて、この幸せが壊れてしまうのならいっそ、、、となってしまいます。
そして、松宮は実は生きていた父親の人物像を追っていくうちに、とある二人の悲しい愛情の形を知ります。
果たしてこの愛情という、厄介な感情をどう処理すれば良いのだろう?
ということで、本作ではこの「愛情」という気持ちが様々な形で現れていて、時として人を殺めるまで暴走してしまう「愛情」って気持ちをどう扱えばいいんですかねぇ?ってのが、問題として挙がってるように思いました。
まあ、現実世界でもこの感情のおかげで素晴らしい人生を送ることができたり、作中のように痛ましい事件が起きてしまいますよね。
そして本作において、その答えはいくつか提示されていて、そのうちの一つは松宮と松宮の母、克子との会話での、以下の克子の一文に集約されると思いました。
「たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると
思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。
だから死ぬまで、その糸は離さない」
真次は繋がっていると思えるだけで幸せでした。
萌奈は父から「大好きだ」とひとまず言ってもらえただけで良かった。
行伸は萌奈に「大好きだ」と素直な気持ちをひとまず伝えるだけで良かった。
多由子は「産んでいい」と言ってもらえて救われた
あなたは愛情という人間の最も美しく、時として醜くもなってしまう感情をどう表現しますか?